運営指導の解説

運営指導と監査の違い(介護保険)

2026年10月11日更新

介護事業所に対する行政の確認には、「運営指導」と「監査」があります。運営指導はすべての事業所が順番に受けるもの、監査は不正などの疑いがあるときに行われるものです。厚生労働省の指針と資料をもとに、違い、運営指導から監査に切り替わる場合、監査の後の処分までの流れをまとめました。

ひと言でいうと

「指導が介護保険施設等に対する支援として行われる一方、監査については、不正等の疑いが発覚した際に、事実関係の的確な把握を行うことを基本としています。」

違いの早見表

運営指導監査
目的サービスの質の確保と保険給付の適正化事実関係を的確に把握し、公正かつ適切な措置をとること
対象すべての事業所。原則として指定(許可)の有効期間内に1回以上通報・苦情などの情報から、指定基準違反や不正などの確認が必要と認められた事業所
方法書類をもとに説明を求める面談方式。原則として実地(一部はオンラインも可)報告や帳簿書類の提出の求め、質問、立入検査など
法律の根拠介護保険法第23条・第24条介護保険法第76条など(立入検査)
主な結果改善報告の求め、過誤調整(返還)の指導勧告、命令、指定の取消し・効力の停止、不正利得の返還(原則40%の加算金つき)

厚生労働省「介護保険施設等指導指針」「介護保険施設等監査指針」(最終改正 令和6年3月26日)と課長会議資料(令和8年3月)をもとに作成。

運営指導は、原則として「運営指導実施日の1月前までに」文書で通知されます。ただし、高齢者虐待が疑われるなど、前もって通知すると確認できないおそれがある場合は、当日の開始時に通知されます。(出典:厚生労働省 介護保険施設等指導指針)

監査になるきっかけ

監査指針は、次のような情報をもとに、必要があると認めるときに監査を行うとしています(要約。原文は出典をご覧ください)。

  • 通報・苦情・相談などにもとづく情報
  • 市町村が高齢者虐待を認定した場合や、虐待などで利用者の生命・身体に危害がおよんでいる疑いがある情報
  • 国民健康保険団体連合会(国保連)や地域包括支援センターに寄せられた苦情
  • 国保連・保険者からの通報情報
  • 介護給付費適正化システムの分析で、特異な傾向を示す事業所
  • 報告の拒否などに関する情報
  • 運営指導で確認した、指定基準違反などや人格尊重義務違反(その疑いを含む)

(出典:厚生労働省 介護保険施設等監査指針 第3)

運営指導の途中で監査に切り替わる場合

指導指針は、運営指導の途中で次のような状況を確認した場合、運営指導を中止して監査を行うとしています。

「運営指導を実施中に以下に該当する状況を確認した場合は、運営指導を中止し、直ちに「介護保険施設等監査指針」に定めるところにより監査を行い、事実関係の調査及び確認を行うものとする。」

  1. 人員・設備・運営の基準に従っていない状況が著しい場合(その疑いを含む)
  2. 介護報酬の請求に不正がある場合(その疑いを含む)
  3. 不正の手段で指定などを受けている場合(その疑いを含む)
  4. 高齢者虐待などで、利用者の生命・身体の安全に危害をおよぼしている場合(その疑いを含む)

報酬の請求の誤りがすべて監査になるわけではありません。不正に当たらない軽微な誤りは、運営指導の中で過誤調整を求められます。運営指導マニュアルは、「不正又は不正の疑いがある場合」を、次のように説明しています。

「報酬基準等の単なる解釈誤りではなく、架空請求等の、請求する根拠のない請求がある又はその疑いがある場合です。」

過誤調整の流れは介護報酬の返還を求められたらにまとめています。

監査の後の措置

  1. 勧告

    指定基準違反などが確認されると、期限を定めて文書で基準を守るための措置をとるよう勧告されることがあります。期限内に従わなかった場合は、その旨が公表されることがあります。勧告を受けた事業所は、とった措置を期限内に文書で報告します。

  2. 命令

    正当な理由なく勧告に従わなかった場合は、期限を定めて措置をとるよう命令されることがあり、命令は公示されます。

  3. 指定の取消し・効力の停止

    介護保険法第77条第1項(居宅サービス)、第78条の10(地域密着型サービス)などに当たる場合は、指定の取消しや、期間を定めた指定の全部・一部の効力の停止が行われることがあります。処分の前には、原則として聴聞または弁明の機会が与えられます。

  4. 不正利得の返還

    偽りその他不正の行為で介護報酬を受け取っていた場合は、返還させるべき額に、原則として100分の40を乗じた額を併せて徴収するとされています(介護保険法第22条第3項)。

(出典:厚生労働省 介護保険施設等監査指針 第4)

全国の件数(令和6年度)

  • 運営指導を行った事業所:50,424(所管事業所数に対する実施率16.2%)
  • 監査:1,190件。監査後の対応は、行政指導による改善報告が470件、改善勧告が205件
  • 指定取消等の行政処分:158件(指定取消59件、指定の効力の一部停止86件、全部停止13件)。処分の理由は、多い順に「不正請求、法令違反、人格尊重義務違反、虚偽答弁」
  • 指定取消等に伴い、令和6年度に事業所などへ返還を求めた額:約11億5千万円(令和5年度以前に監査し、令和6年度中に確定した額を含む)
サービス監査(立入検査)事業所改善報告改善勧告効力の一部停止効力の全部停止指定取消
通所介護633085-3
地域密着型通所介護60258515

令和6年度。厚生労働省 課長会議資料(令和8年3月)「(1)第3表 令和6年度介護サービスの種類別にみた監査の実施件数、監査結果の指導・処分等件数」より。「-」は0件。指定取消の件数には、聴聞通知後に廃止届が提出された事業所を含みます。

(出典:厚生労働省 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和8年3月))

日ごろの備え

運営指導は、原則として指定の有効期間内にすべての事業所が受けます。運営指導で確認される項目と確認文書は確認項目と確認文書(通所介護)24項目に、返還につながった事例は運営指導で返還になるのはどんなとき?にまとめています。

監査無双は、計画書・実施記録・研修・委員会の記録をまとめて管理し、運営指導の確認項目ごとに不足を表示するアプリです。記録と書類の管理を支援するもので、運営指導・監査への適合を保証するものではありません。

出典

数字と引用は、2026年10月11日に上記の資料で確認しました。割合は有限会社ZEN SEKAIが計算し、小数点以下を四捨五入しています。

このページは、公表資料をもとにした参考情報です。個別の事業所の判断や行政の指導の結果を示すものではありません。

実際の手続き・様式・期限は、所管の自治体からの通知と案内に従ってください。